木版画の大家、吉田遠志のもとで版画を学び始めて、程なく始めたのがこのシリーズです。作品は全部で19点。1974年から76年までの三年間の仕事でした。版画協会展に初入選したのも、準会員に推挙されたのもこのシリーズでした。

また、身内以外の人に買って頂いたのもこの作品が初めてでしたし、外国の方からの問い合わせを受けたのもこのシリーズが始めでした。そして、今でも良く問い合わせを頂きます。

私にとっては懐かしく、有り難い作品で、こうして書いている間も、この作品たちを背負子で担いで、上野の都美術館へ搬入した日のことが思い出されます。

ただ、残念な事に、版木の大半が雨漏りの為に駄目になり、摺り直すことが出来ません。今私の手元に残っているのは未完成作も含めて十二、三点だけです。

今こうして、改めて見てみると、既に三十年ほどあとの「初恋」シリーズの原型が有る様に思えます。

この三十年で、技術的には随分進歩したと思うのですが、心は余り変わっていないようですね。